さて今回は本題に入る前に、オニビセイウチ氏のその後に触れておこう。
前回、彼を単なる雑魚怪人と紹介したが、実は画面には結構映っているのだ。
まず「仮面ライダーV3」全52話中、残り10話となった第43話からオープニング・エンディング共に映像が刷新される。(エンディングは曲も変わる)このエンディングに彼は出演している。
次に第52話、最終回恒例の再生怪人軍団には彼も含まれている。しかもほぼ同時刻のはずなのに全然別の場所にそれぞれ出現していて、ちょっとしたオニビセイウチ祭りの様相を呈している。もちろんその後デストロン基地でもV3を迎え撃つのだが、戦い始めた途端に画面からフレームアウトしてしまい、その後の彼がどうなったのかは分からない。ひょっとしたら野良化して生き延びているのかもしれない。
ファン宿願のオニビセイウチ祭り開催! |
ここにキバ男爵、並びにオニビセイウチ氏のご冥福をお祈り…おっと危ない!!
ここからが今回の本題だ。
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前回、幼き日のポコ太はキバ男爵の言葉に目から鱗が落ちたと書いたが、もう一つ印象に残っていることがある。それはキバ男爵の言葉を受けて、V3が返したセリフだ。
アジトに踏み込むなり「たった今、怪人が息を引きとった」と告げられたV3。
ヒーローたるもの、さすがにこの状況で「やったぜ!」とか「ざまーみろ!」とか言うわけにはいかない。
まぁ中には小躍りして赤飯炊きながら言っちゃいそうなノーテンキラキラな奴(注)もいるが、仮面ライダーV3・風見士郎といえば…というか『宮内洋と書いてヒーローと読む』レベルの大王道のヒーロー役者、宮内洋氏にそんなセリフを吐かせるわけにはいかない。
しかし、かといって憎むべき人類の敵であり、あまつさえ自分の家族を皆殺しにしたデストロン相手にお悔やみを申し上げるというのもまずい。
これは地味にピンチである。ここで下手な答えをすれば、一気にヒーローとしての資質を問われてしまう。全国のちびっこが食い入るように見つめる中、あなたならどう答えるだろう?
では、ヒーローとしての立場がかかった重圧の中、V3の発した言葉を見てみよう。
キバ男爵「たった今、オニビセイウチは息を引きとった」
V3「そうか、オニビセイウチは死んだか」
おうむ返し!
ほぼ何も言っていないに等しい、おうむ返し!
このスルー力の高さ、なかなか真似できるものでは無い。さすが改造人間である。
しかもここでは「息をひきとる」という、ちびっこには多少わかりづらい表現を「死んだ」という言葉に置き換え、わかりやすく噛み砕いて説明している。
プロである。プロのヒーローである。
幼き日のポコ太は、ただただ舌を巻くだけであったが、だがしかし、今見直してみると『返答に困るようなことを言われたら、そのままおうむ返しする』という、これはなかなか実生活で使えるテクニックだ。
実践例)「うちのショコラちゃんは血統書付きでございますのよ、ほほほ」
「そうですか、お宅のショコラちゃんは血統書付きですか」
あなたも早速明日から、家庭で職場で実践してみて欲しい。
ヒーローの答え/完