お好きな方へどうぞ。

2015年11月29日日曜日

【11月の新曲】「慟哭」


遅れに遅れましたが11月の曲です。

11月の曲です。(言いはる)


これは20年位前、通常のドラムキットを使わない曲ばかり作っていて、その頃にスケッチしておいた曲ですね。
僕としては、この曲と前回の「Sun-Islandの風」が、自分の幹の部分にある曲だと思っています。

ただ、こんなのライブでどうやりゃいいんだよ(←)




ここからしばらく暗い曲が続きます。
が、今回ほど暗い曲はもう出てこない と思います…たぶん…。
来月は暗いながらも、少しエッジの立ったものを作る予定です。










ところで自分に身近な人になればなるほど
「ミツカワのいったいどこからこんな曲が出てくるのか?」とよく言われます。


え?そんな時、僕が何と答えるかって?


答えはこちらの名台詞で。
フハハハハ、一見、音楽と無関係なエントリーと思わせておいて、実は この時のための伏線だったのだよ!!



 …たぶん。



次回はちょっと機材のお話。
んじゃ、また。






2015年11月21日土曜日

[特撮-10] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その3

さて『ジェットマン・エントリー』第三弾


「鳥人戦隊ジェットマン」をご存じないという 悲しい人生を送られてきた方 は、是非こちらからあらすじなど、ご確認ください。

 ​[特撮-08] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その1
 [特撮-09] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その2

なお、読んだからといって 人生どうにもならないこともあります のであしからず。






リーダー・天童竜のキャラクター造形


ではここからはもう1つの要素。
レッドホーク / 天堂竜の人物像を見ていこう。

この番組にはとにかく 結城凱という "飛び道具" がいるので、とかくそこに話題が集中しがちだが、実は天道竜という男も革新的なレッドだった。

一見、模範的なレッドに見える竜のどこが革新的だったのか?
そもそも 竜と凱はなぜ仲が悪いのか? それぞれの側から見てみよう。






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 結城凱の場合 


とはいえ、凱に関しては特に書くことはない。

そもそも この番組に凱と仲の良い男性は登場しない(笑)(注)
初登場シーンで自分から「俺は納豆と男が大嫌いなんだっ!」と言い切ってしまっているわけなので…。

ただ重要なポイントとして、竜との関係性は前回書いたような『女をめぐって殴り合いになる』といった巷のイメージとは違う、ということ。


凱が竜を嫌うのは恋のライバルだからではない。


その証拠に第2話でジェットマンへ勧誘しに来た竜と、初対面にもかかわらずいきなり大乱闘になってしまっている。


 凱「第一、俺はてめえみたいなタイプ大っ嫌いなんだよ!」
 竜「お前には何もわかっていない。地球が危ないんだぞ!個人的な感情なんて問題じゃないだろ!」


この時点で凱はまだ、他の3人(香・雷太・アコ)と出会っていない。
つまりこの喧嘩は香に対する色恋沙汰ではない。
なのに(バードニックウェーブによって得た力をフルに使った)この大乱闘。

凱はただ純粋に竜と "ウマが合わない" のだ。




もう1つ挙げておきたいのは、凱が魅力的なのは(視聴者に対し)無様な姿もさらけ出せることである。


第14話ラストにて、自分の至らなさに地面を叩いて悔しがる凱。
もっともこの "至らなさ" というのは戦士としての至らなさではなく、香を振り向かすことができない自分の至らなさ なのだが…。


また第18話では敵の攻撃に体を侵され、最初こそ虚勢を張っていたものの、いよいよとなると
 「香、怖いんだ…本当はどうしようもなく…死にたくねえ…死にたくねー!!」




アウトローというのはそれだけで一定の人気が出るものではあるが、この格好良い・悪いを越え、むき出しで自分を表現する凱に多くの視聴者は共感した。

そんな生き方をしてきた凱にとって目の前に現れた竜は、彼が否定してきた(実態の無い)『世間一般的な規範・規律』そのもの である。

それだけに竜のことが鼻につくのである。



(注)ただ "仲の良い女性" も登場しない。出てくるのは "遊びの女" ばかりだ。
この、脚本家・井上敏樹が好んで書く "遊び人でありながら、結局独りでしか生きてゆけない男" というのは、その後先鋭化した形で「超光戦士シャンゼリオン (1996)」涼村暁へと受け継がれていく。







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 天童竜の場合 


さて問題なのが、竜の方だ。
ちょっと凱との会話を見てみよう。

 凱「もうテメェの説教にはうんざりだぜ!人のために自分を犠牲にすりゃ、それで良いのか?そんな人生はまっぴらだぜ!俺の夢は、俺の気持ちはどうなるんだ?!」
 竜「自分を犠牲にするのが戦士の仕事だ!お前の考え方はみんなのチームワークを乱しているだけだ!!」
(第31話)


番組スタートから半年位、2人は 事あるごとにこの調子 だ。
例えばウィキペディアでも竜の人物像はこう紹介されている。

 → プロ意識が強く、公私を混同しないことを己の信条とし、リーダーとしての責任感と平和を守る使命感は強い。

この人物像自体は間違っていない。(このエントリーを最後まで読んでから、もう一度この紹介を読むと "間違ってはいない" という意味が分かるはずだ)

この紹介や凱とのやりとりを見ると、彼は正統派の戦隊レッド=リーダー像にみえる。




しかし竜が本来そういう人間でない事は、第1話冒頭で描かれている。



リエという公私ともにわたるパートナーがいた頃の竜は…
仕事中でも公衆の面前でいちゃつき、極秘任務で小田切長官に呼び出された際も、手を握り合い長官にたしなめられる バカップル状態。



この時『ジェットマン』なるものを初めて聞いた2人は、

 リエ「人間を超えるって、なにか妙なものになっちゃうんですか?」
↑こちらはちゃんと長官の話を聞いている。

それに対し竜の反応は↓
 「あの、ジェットマンとかになると僕たちのコンビは解消ってことに…?」

ここで竜が気にしているのは、ジェットマンとは何か?ではなく、ジェットマンに加入することによってリエと一緒にいられなくなるのでは?ということ。しかもそれを長官に対し臆面もなくストレートに聞いてしまっている。



また1年を通して頻繁にインサートされるリエとの思い出シーン。
そこで見せるはじけた表情は、やはり "ジェットマンの天童竜" とはズレがある。


これだけ見ると、恋人との関係に依存しきった(彼女がいないと何も手につかなくなるような) "ただ仕事ができるだけ” の情けない男だ。





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結局、番組の大半で竜が公に見せる言動は、掛け替えのないリエを失ってしまったことによる喪失感。そしてリエを奪ったバイラムに対する怒り。という個人的な感情を押さえ込み、『地球を守る』という大義にすり替えている だけに過ぎないわけだ。


だから竜は絶対に本音で喋るわけにはいかない。


自分を押し殺し、それが軍人としての使命と言い聞かせるしかないのだ。
たとえそれがやせ我慢だろうと、竜が踏ん張っていないと寄せ集め集団のジェットマンなど、あっという間に崩れてしまうのも、また事実 なのだから。


その上で竜のセリフを見直せば、凱に向けて発している言葉は、おそらく常日頃 自分自身に言い聞かせている言葉 なのだということが伺えるだろう。

「地球が危ないんだぞ!個人的な感情なんて問題じゃないだろ!」
「自分を犠牲にするのが戦士の仕事だ!」



竜から見れば凱の自由気ままな言動は、普段押し殺している自分を見せつけられる ようなもの。
なので竜は凱に対して大上段から説き伏せようとしてしまうのだ。





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しかし、それだけに本来リーダーの素質がない竜は、度々やらかしてしまう。


猛アタックをかけてくる香に対し「会わせた人がいるんだ」と誘い出す → 完全に舞い上がる香 → しかし竜が連れて行ったのはリエのお墓 → 呆然とする香の前でリエとの思い出をとうとうと語りだす(第22話)


「リエ…俺が愛したたった一人の女性だった」
「今でも俺は忘れられない…リエの声、ちょっとした仕草、初めてのデートの時どんな服を着ていたのか…」
「リエが死んでも俺たちはずっと一緒だった…ずっと一緒に戦ってきた」

竜の変身ブレスレットの裏にはベッタリとリエの写真が…。


いや、気持ちは分かるぞ、竜…気持ちは分かるけどなぁ…ちょっとそれは…好いてくれる女に聞かせる話じゃないと思うぞ…。


案の定、ショックを受けて泣きながら1人で帰ってしまう香。
その背中に向かって、またトンデモなく余計な一言

「かおりーっ、凱を、凱を見てやってくれ、あいつは本気でお前を…」




『こうすれば香は自分をあきらめるだろう。そして凱とくっつけばジェットマンの結束が高まるはずだ

竜はジェットマン全体のことを常に想いながらも、凱や香の気持ちを逆なでするような言動で肝心のチームとしての一体感を 自分から壊している面がある。

彼には一人一人の気持ちにまで気を配れるような余裕がない。要するに空回っているのだ。

 凱「(嘲笑)ジェットマンか…お前の頭の中はそればっかりだ」(第22話)





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さらにその後、敵バイラムの幹部・マリアの正体がリエであることに気付いてしまうという 最大の試練が訪れる。


なお『戦いの際、マリアと何度も顔を合わせているのに、今まで気づかなかったのかよ?』というツッコミをたまに聞くが、すでに第5話の時点でマリアがリエと似ているという事は気付いている。(画像参照。しかし、いつ見ても凄いサブタイトル…
しかし、この時点では『リエであるはずがない。リエは死んだんだ』と自分に言いきかせて思いを断ち切った。
これも意地悪く見れば、深く考えないよう逃げたともとれる。






しかし第31話において、ついに否定しようがないかたちで現実を見せつけられることとなる。
この極限状態に対しては、もはや付け焼き刃が通用するはずもなく、ここから 竜本来のメンタルの弱さが次々と露呈してしまう。




見るもの全てを ドン引き させた哀れな竜の姿。

・現実を受け入れられず、自分の殻に閉じ籠り妄想のリエと遊ぶ。(第32話)
 「凱、香…紹介するよ。俺の恋人、リエだ」





・一人きりでリエの誕生日パーティーを始める(第48話)
 誰もいない空席に向かって真顔で「リエ…誕生日おめでとう」





かつて、ここまで情けない姿をさらけ出したレッドがいるだろうか?
いやいない。(反語)



だが、しかし…





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 雷太「…そうなんだよ…いつも偉そうなこと言ってる割には、てんで情けないんだ…」
 凱「…竜の悪口を言うんじゃねえ…いいか!世界中で奴を、竜を貶していいのは俺だけだ!」

だがしかし、このむき出しになってしまった竜に対し、共感を覚えるようになっていくのが他ならぬ凱であった…。






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天道竜が、そして「鳥人戦隊ジェットマン」が革新的だったのは、本来リーダーには向かない者が、それでもレッドとしてみんなを引っ張っていかなければならない状況に追い込まれた戦隊ということ。

これはその後『本来の適格者ではない "代理人としてのレッド"という形で「星獣戦隊ギンガマン (1998)」「未来戦隊タイムレンジャー (2000)」など(注)小林靖子脚本作品に多く見られる構造である。
(注・超特大ネタバレを含むのであえて『など』とした。また戦隊以外では「仮面ライダー龍騎 (2002)」もこれにあたるだろう)

しかし凱という飛び道具のせいで目立たないものの、1991年の時点でその源流となるような "仕掛け" があったということだ。





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というわけでまずは、あえてこの番組の土台部分から見てきた。

ここには 肝心の恋愛要素が全く無い ということが分かっていただけただろうか。
次回以降はいよいよこの番組における恋愛要素について
なぜ恋愛要素が組み入れられたのか?
どこが恋愛ドラマであり、どこが恋愛ドラマではなかったのかを見ていこう。







…と、その前に
もうひとつのblogの方で先日まで 秋のネガティブ祭 というエントリーを書いていましたが、これは 単なる序章に過ぎなかった!

次回、このblog『CHAKAPOCO!AIRMAIL』にて
"真の秋のネガティブ祭り"
の幕が上がる!!


というわけで遅れましたが今月のオリジナル新曲

タイトルはその名も「慟哭」

愚かな人間どもよ、ドン引きするがよい。ワッハッハッハ (本エントリーの趣旨に沿ってラディゲ風)

んじゃ、また。






2015年11月14日土曜日

[特撮-09] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その2

さて『ジェットマン・エントリー』第二弾


「鳥人戦隊ジェットマン」をご存じないという 残念な方 は、前回のあらすじを見てもらうとして、長年モヤモヤしていたんですが、この番組って面白おかしくメディアで取り上げられてるうちに変な尾ひれがついてますよね? 


これなんですが ↓


『戦隊内で三角関係になり、殴り合いが起こる』


この出所不明の煽り文句。結構早い時期から耳にしました。
ちなみに今年(2015年)の写真週刊誌「FLASH」の戦隊特集記事でも「ジェットマン」はこんな紹介。

→ ラブストーリーで大人も魅了 〜(中略)〜 ホワイトをめぐるレッドとブラックのラブバトルが話題に。

ここでも三角関係という言葉こそ使われていないものの、そう思わせる文章…。



しかし実際の番組では、確かに戦隊内での恋愛模様は描かれているし、殴り合いも(しょっちゅう)起こるけれども、三角関係にはなりません!

一体、こんな話どこから出てきたんだろう???
一応確認しておきますが、戦隊内で起こる恋愛模様はこう↓


つまり気持ちの流れは一方向の一直線
三角関係って『三角』って言うぐらいだから、この場合は違うだろう…と思って辞書を引いたら…


【三角関係】さんかくかんけい―くわん―5
一人の男と二人の女,または一人の女と二人の男との間の複雑な恋愛関係。
(スーパー大辞林より)


うーむ、この表現…。人数が3人ならいいのか?気持ちの流れは関係無いのか?
なら俺の経験したあの時のアレも三角関係だったのか…?!(人に歴史あり)
どうも自分自身が愛の迷路に迷い込みそうになり、考えるのをやめたミツカワであった。

第13話「愛の迷路」





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…と、あえてこの話から始めたのは、↓これを強調しておきたかったから。

この番組、三角関係どころか むしろ敵味方入り乱れてのドロドロの愛憎劇になるぞ!


本エントリーのタイトル
『鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか?』
結論を先に言うと 恋愛ドラマではなかったし、恋愛ドラマだった。
別に禅問答をしているわけでは無い。

では、なにが恋愛ドラマではなく、どこが恋愛ドラマだったのか?

そこを再整理しながら「鳥人戦隊ジェットマン」の本当の面白さに触れてもらおうというのが、このジェットマン・エントリーの趣旨である。



この複雑な人間模様を紐解く前に、まず注目しておくべき特徴的な点が2つある。

・登場人物、全てがバラバラ
・レッドホーク / 天童竜のキャラクター造形

人間模様を含めた「鳥人戦隊ジェットマン」の面白さ、そしてこの番組を傑作たらしめたのは、この ”下地づくり” があってこそなのだ。





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・登場人物、全てがバラバラ



これは 敵・味方に共通して 描かれている。



ジェットマンの成り立ちは前回のあらすじの通りだが、この番組が放送された1991年時点で、
・お互いに過去・現在を問わず何の因縁もなく
・また、何者かによって "選ばれた" わけでもない
完全に無関係の者たちによる戦隊 というのは初であった。


それはつまり、お互いに共感もなく、地球を守るということに対して(竜以外は)何の義務も負わない者たちということだ。
番組スタート時での香・雷太・アコは一般的な常識と、表面的な責任感で戦っているに過ぎない。
なので、そういうものを持たない凱は非協力的だし、雷太たちも劣勢とみればすぐに逃げ出す。お嬢様育ちの香は自分の苦手なこと(飛行訓練)を避けようとする。






そしてこの番組のもう一方の主役と言える、敵「次元船団バイラム」にも同じ仕掛けがしてある。


なんだか記念写真のようなバイラムの方々



まず、バイラムには中心となるボスが存在しない
玉座はあるもののその主はすでにおらず、現在は4人の幹部が統率なく好き勝手にやっているだけだ。



つまり番組開始時点で『組織としてのバイラム』はすでに終焉していると言える。
(ここがとても珍しい部分)



なので(少なくともボスを失って以降の)バイラムの目的は地球侵攻ではない。
口ではそのようなことを言っているが、彼らの真の目的は “戯れ” つまり目的を失った者たちによる “暇つぶし” である。
逆に言えば “暇つぶし” で地球を、ジェットマンを、危機に陥れることが出来るほど圧倒的な戦力を保持しているとも言える。



また、これは特にラディゲに顕著だが、地球侵攻は手段であり相手を屈伏させること自体が目的という 倒錯した面 もある。

そのせいで彼は、
・ジェットマンが自分以外の誰かに倒されそうになると、躊躇なく妨害する
・自分にとって目の上のたんこぶが現れると、これまた躊躇なくジェットマンと手を組み、倒す。

ジェットマンが最終的に勝てたのは 結果的に彼のおかげ という部分も大きい。



また一人一人の風貌を見れば分かるように
・ラディゲ → 男
・マリア → 女
・トラン → 子供
・グレイ → ロボット
パーソナルな部分から重ならないようになっている。

このうちマリアは元地球人である。(あらすじ参照)
残りの者もロボットであるグレイは論外として、トランとラディゲの2人も、その身なりや能力を見る限り、同種族とも思えない。

そもそも『次元 "船団"バイラム』の"幹部"と名乗りながら、彼ら4人以外は画面に登場しない。まるで "たまたま同じ船に乗り合わせた客同士” のような統一性のなさである。
(前年の「地球戦隊ファイブマン」の敵、「銀帝軍ゾーン」が “船長” を頂きに統率の取れた組織として描かれていたのとは対照的)



当然 仲は悪い が、このバラバラさゆえにお互いのテリトリーが重なることもなく、せいぜい皮肉を交わす程度で済んでいる。
(なので番組中盤、メンバー構成に変化が起こると途端に血なま臭い展開になる)

また先に書いたように所詮戯れなので、そこまでお互いヒートアップすることもない。
番組開始時点ではある意味、軋轢のない平和な状態 である。



しかしここに、トランが子供らしい無邪気さで「ジェットマンを倒したものが僕らのボスになるというのはどうかな?」と提案をし(第2話)これにみんなが乗ってしまったために、“戯れ”に目的が生まれてしまい 妙な方向に動き出すわけだ。(特にラディゲ)





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このようにスタート時点で、敵・味方どちらも、組織の体をなしていない = 全員がバラバラというのが、この番組「鳥人戦隊ジェットマン」の特徴的であり、番組テーマに関わる根本的な部分だ。

そしてそれを端的に表現していたのが、1年間流れ続けたこのアイキャッチだった。

全員バラバラな方向を見つめる5人
※ 変身前の姿によるアイキャッチも「鳥人戦隊ジェットマン」が初であった。




次回はこれに加え、もうひとつの "下地"
なぜ天童竜と結城凱は仲が悪いのか? 
リーダー・天童竜のキャラクター造形
を見ていこう。





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さて前回ふれたように今後スポットライトを浴びる機会がないので、ここでジェットマン最大の功労者を紹介しておく。




鳥人戦隊長官・小田切綾


小田切綾はスーパー戦隊史上初の女性司令官である。

『初』とは書いたが、例えば「百獣戦隊ガオレンジャー」(2001) のテトムは “まとめ役” ではあっても司令官とは言い難い…などと考えると、作戦の立案・指揮/命令を行う "純然たる司令官” というのは2015年となった現在でも珍しい。(注)

(注)他は「忍風戦隊ハリケンジャー」のおぼろさん。もしくは御前様と「侍戦隊シンケンジャー」の終盤の一時期くらいか?(「 轟轟戦隊ボウケンジャー」のミスター・ボイスは、基本はあくまで "ミスター" なので)




この小田切長官。
自らを『完璧な人生』と言い切る。

1話における絶望的な状況に 全く動じず 竜を鼓舞し、民間人である香達を説得・勧誘して周る。
また自らロボットの開発指揮、民間人組の戦闘訓練を行うだけでなく、

・既にバードニックウェーブを浴びてジェットマンとなっているはずの竜を腹パン一発で気絶させ(第1話)
・戦意を失った竜に銃口を向け発砲 & 飛行中のヘリコプターから突き落とす(第11話)
・極めつけは生身で巨大ロボに乗り込み1人で怪人を倒してしまう(第43話)

ちなみに巨大化した怪人を変身もせず、ロボットに乗り込み1人で倒してしまった指導者役は、40年にわたるスーパー戦隊の歴史の中でも小田切綾ただ1人である。



女傑である。



OPは1話のみ『小田切綾』  2話からは『小田切長官』




しかし、なにより彼女が信頼のおける名司令官である証明は、1年を通して何度も繰り返されるこの台詞に現れている。


『逃げなさい』
『逃げるのよ!』


ヒーロー番組でこのセリフを躊躇なく、たびたび吐ける人はそういない。
まあ、このセリフを受けるジェットマン側はこの有様なのだが →
(アコ)「言われなくても逃げるわよ!」(第3話)

先のように戦意喪失した者に対しては鬼のような仕打ちでありながら、けして感情的にならず的確に状況を判断して、撤退させることをいとわない。
ジェットマンのトホホな現状を一番わかっているのは彼女なのだ。




おまけに戦いの日々に疲れたメンバーを 慰安旅行にまで連れてってくれる!(第36話)




つまり彼女は、民間人の寄せ集めになってしまったジェットマンの父親役と母親役を1人でこなしているのだ。
この一人二役のできる司令官ポジションというのはスーパー戦隊の歴史の中でも特異な存在である。



ここまでくると思うことは皆、ひとつ。

『長官がバードニックウェーブを浴びて戦った方が話が早かったのでは?』




どちらにせよ小田切綾、確かに完璧な人生である。

なお、結婚の申し込みは山ほどある(自己申告)そうだが、番組終了時点でいまだ独身である。








2015年11月7日土曜日

[特撮-08] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その1

さて、当blog本格オープン以来音楽ネタが続いてきたが、いよいよ今回より特撮ネタも本格オープン!
第一弾はスーパー戦隊シリーズ第15作目(当時の数え方では13作目)「鳥人戦隊ジェットマン」(1991)だ。




登場人物の恋愛模様を中心に据えたこの番組は、ファンの間で「戦うトレンディードラマ」と呼ばれ(注)、当時低迷期に落ち入っていたスーパー戦隊シリーズを救った救世主と言われている。(あくまで世間一般の評価です)

その斬新な内容で、今だにバラエティーや一般雑誌などで採りあげられている。


が、はたして「鳥人戦隊ジェットマン」は本当に恋愛ドラマだったのか?
そもそもなぜ、こんな複雑な人間模様を描くことになったのか?

今回は初回ということで、簡単にあらすじ登場キャラクターを紹介します。

 (注)このフレーズ、確か1番最初はジャンプ放送局(少年ジャンプの読者投稿欄)に載ったものが広まったのではなかっただろうか?どうでしょう?







〜「鳥人戦隊ジェットマン」あらすじと登場キャラクター 〜


199X年、地球防衛軍スカイフォース隊員である天童 竜(てんどう りゅう)と、同じく隊員であり竜の恋人である藍 リエ(あおい りえ)は、その能力を見込まれ極秘プロジェクト “ジェットマン” のメンバーに選抜される。

世界よ、これが(この時点では)リア充だ!

2人は計画の責任者・小田切長官の指揮の元、ジェットマンとなるための超エネルギー:バードニックウェーブを浴びるため、宇宙ステーション:アースシップに赴いた。

しかし一人目の竜がバードニックウェーブを浴びた、まさにそのとき次元戦団バイラムが地球侵攻を開始。手始めにアースシップを襲撃する。
これによりアースシップは壊滅。残りのバードニックウェーブは地球に四散してしまう。
さらに竜の目の前でリエは隔壁に開いた穴から宇宙空間へと吸い込まれていった。


リエを失い錯乱する竜は小田切長官に引きずられ、崩壊するアースシップを脱出、地球に帰還する。



天堂 竜(てんどう りゅう) / レッドホーク

鳥人戦隊ジェットマンのリーダーであり、唯一正式な訓練を受けた軍人である。
プロ意識・責任感はずば抜けて高いが、それを 他のメンバーにも求めるため、温度差が生じることも。死んだ恋人・リエをひきずりまくる。
なお、実家は漬物屋。

彼の人物像はいずれまた



リエを想い、泣き崩れる竜に小田切長官が下した命令。
それはバイラムと対抗できる唯一の手段、“ジェットマン” を組織するため、地上に飛び散った残り4つのバードニックウェーブを(たまたま)浴びた人間を探しだすこと。
しかし竜と長官が探し出した四人は、よりによってこんな連中だった…。



鹿鳴館 香(ろくめいかん かおり) / ホワイトスワン

大財閥の箱入り娘。外の世界に憧れジェントルマン(← ジェットマンを聞き間違えている)に加入。竜に惚れ、猛アタックを開始する。キレるとべらんめえ口調になる。




大石 雷太(おおいし らいた) / イエローオウル

農家。「暴力は大嫌いだ」と加入を断った直後、バイラムの襲撃により自分の畑を荒らされたことにブチ切れジェットマンに加入。意外とニヒリスティックな面もある。運動神経はゼロ。ちなみにメンバーの中で最初に結婚する(画像右)ま、世の中そんなもんですな。




早坂 アコ(はやさか アコ) / ブルースワロー 

女子高生。ジェットマンをアルバイトと捉え、金銭交渉から入る。
だが、香がその場で切った1000万円の小切手に目を回すなど、5人の中では一番フツーな感覚の持ち主。(後に小切手は返却)
一番年下だが、メンバーの人間模様を一番冷静に把握できているのも彼女である。






この3人はバードニックウェーブを浴び超人的能力を得たといっても、元が元なので 戦力としてはほとんどあてにならない。

先の思いやられる中、竜が探し出した最後の男。
彼こそ当時、視聴者の度肝を抜き、今なお語り継がれる伝説の男である。




結城 凱(ゆうき がい) / ブラックコンドル

酒・女・タバコ・ギャンブル・喧嘩に明け暮れるアウトロー。納豆と男が大嫌い(自己申告)
「地球の平和より惚れた女の方が大事」と言い切り → 本当にそう行動する ←
戦力にはなりえるが、協調性はゼロ。


当然、竜と反目しジェットマン加入を断る。また加入後も竜と喧嘩が絶えない。
香に惚れ、猛アタックを開始する。
ちなみに『地球のため』と言いくるめ、アコのファーストキスを奪おうとしたこともある。
まさに 歩く “おまわりさん、こいつです!” 状態。


なにせ初登場シーンでいきなりこれである。


もちろん行きずりの女をナンパしてお持ち帰りの図だ。
もういろんな意味で、360度一斉砲撃レベルの攻めまくった画である。


ちなみにこちらの場面↓ 他の4人は戦闘中です…。




なお当時、1年間見続けたミツカワの胸に一番残った凱のセリフはこれ↓

「いいか?女が露天風呂に入るってことは "覗いてくれ” ってことなんだ。そんなことも分かんねえのか!」  

そ、そうだったのか?! 知らなかった!勉強になりますっ!!





…というわけでこの状況、もはやそこら辺の犬ころとかにバードニックウェーブが当たらなかっただけラッキーだったと思うしかない。
結果、スカイフォース・エリートによる先鋭部隊となるはずだった“ジェットマン” は竜以外、民間人(しかも志願者ではなく、たまたま当たった人)の寄せ集めになってしまった。


しかもである。
敵である次元船団バイラムは、歴代スーパー戦隊の中でもかなりの強敵
プロの軍人として使命感に燃える竜にとって気苦労の耐えない日々が続く中、さらに追い討ちをかけるのがこちら↓

宇宙空間に吸い込まれ死んだと思っていた恋人リエは、洗脳されバイラム幹部・マリアとなっていた!
マリアは非常に冷酷・攻撃的な性格で、ジェットマンを目の敵にして襲ってくる。



バイラム幹部・マリア / 藍 リエ(あおい リエ)





もはやこれでは「戦うトレンディードラマ」ではなく「実録、内憂外患」である。


この絶望的な状況で、なんとか体制を整え最終的にジェットマンの勝利へとつなげることができた大きな要因は、1つはバイラム側のあまりの結束力のなさ(これはまたいずれ)と、もう1つは彼女の功績である。



鳥人戦隊長官・小田切綾


次回は、今後話題がメンバーの恋愛模様となると蚊帳の外になり(涙)ふれる機会がないと思われるので "スーパー戦隊史上初の女性司令官” である、鳥人戦隊長官・小田切綾について書き留めておく。


んじゃ、また。