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2015年9月4日金曜日

スクェアな日々 〜 たった4小節の冴えたやり方

(ここでは『THE SQUARE』及び改名後の『T-SQUARE』共に『スクェア』と表記します)




僕はとにかくスクェアっ子でありました。


特にリーダー・安藤まさひろの書く曲はどれも『歌のない歌モノ』と言っていいほどPOPで、結局自分は(歌の有る無しにかかわらず)歌モノが好きなんだなと思います。

これに関しては "安藤さんっぽい曲” というイメージで作られた「OMENS OF LOVE」(作曲:和泉宏隆)を聴くと、メンバー間でも共通した認識だったのではないでしょうか。

反面、スクェアに批判的な人から “歌謡フュージョン” と揶揄されるのも分かる気はします。

当時は同じくジャパン・フュージョンである、高中正義・鳥山雄二・小林泉美なども好きでよく聴きましたが、スクェアにはそれらとは系統というかニュアンスの違いを感じていました。
(ここで言うスクェアはバンド形式が確立した1982年以降のものです)



余談ですが、80年代に自分が注目していたプレイヤー&プロデューサーの、青山純・久米大作・鷺巣詩郎が全員、過去にスクェアのメンバー経験があったことを後追いで知り、ひょっとして自分の音楽的趣向はとても狭いのではと不安になったこともありました。



当時、髪を下ろした伊東たけしに衝撃を受け、おもわず買ってしまった Keyboard Magazine 1987年4月号の表紙写真。








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初めてスクェアを知ったのは伊東たけしの出演していたサントリーのCMでした。

そこで流れていた「TRAVELERS」が気にいってスクェアを聴くようになったわけですが、ドはまりしたのはアルバム「S・P・O・R・T・S」(1986)収録の「TAKARAJIMA」と「LEAVE ME ALONE」の2曲です。

僕は楽器を始めたのが遅く20歳を過ぎてからでしたが、一番初めに弾こうとしたのが「LEAVE ME ALONE」のピアノソロでした。ドレミファすら怪しい人間が弾けるわけありませんよね (^_^)

しかしそのくらい自分の中でキーボード(アコースティックピアノ) = 和泉宏隆と言う図式が確立していたのは確かです。

特にきちっと構成されたソロが好きな自分にとって、「TAKARAJIMA」のピアノソロは『16小節の作曲』と言っていいほど完璧な構築美でした。






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ただ今回は和泉宏隆の話ではなく、リーダー・安藤まさひろの話です。

その作曲センスやギタープレイ(バッキングからソロまで)については、いまさら語るまでもありませんが、ここでは初めて聴いた時から僕が胸を鷲掴みにされてしまった "たった4小節" について。







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曲としては先に挙げた2曲をよく聴きましたが、アルバムとしてはその翌年発売された大ヒットアルバム「Truth」(1987)のB面を何度も何度も聴きました。
特に最初の2曲「Breeze and you」「Giant side steps」のために、何度ダビングしたテープを伸ばしてしまったかわかりません。


今回はその「Giant side steps」(作曲:伊東たけし)の話なのですが、自分にとって特に印象深いのはイントロ最後の4小節
ここに、この後始まるメインメロディーを迎えに行くように挿入される、安藤まさひろのギターフレーズ。


これが絶品なのです。


自分の場合、曲の好き嫌いはイントロが始まった時点でほぼ決まってしまうのですが、この曲ではイントロから流れるメインリフで既に虜になっていたところへ、さらに現れたこのギターフレーズでダメ押し!でした。






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今回のようなエントリーで肝心の音が無いのは致命的だとは思うのですが、著作権を考えると貼るわけにもいかず、また iTunes の試聴はイントロの終わりから始まっていたので、仕方なく譜面に起こしてみました。


PCから御覧の方ならこちらの Amazon 商品ページから該当部分が試聴出来ますので、ぜひ確認してみてください。
7曲目「ジャイアント・サイド・ステップス」00:29~00:37のギターフレーズです。






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このギターフレーズはオブリガードのような他者を補完したり装飾するものではなく、独立したソロフレーズです。

冒頭の賑やかな8小節の後、一旦落ち着いた雰囲気となる中このギターフレーズが現れ、主題(メインメロディー)への期待感をいやがおうにも高めます。
特にこの4小節中、3小節目でオクターブ上にフレーズが駆け上がるところは、いつ聴いても気持ちよく感じます。

この4小節内での構成力も素晴らしいのですが、しかし曲全体を見た場合、あくまでこれは主役登場を盛り上げるためのお囃子にすぎないわけです。



で、ここが重要なのですが、このような脇役フレーズなら普通は少し引いた無難なフレーズになりがちです。しかし譜面を見てもらえば分かるように、このフレーズはこのままギターソロに入ってもおかしくないような結構派手なフレーズなのです。

これ以上やると、後に続くメインメロディーの邪魔をしてしまう。
これ以上やると、リラックスした曲の雰囲気を壊してしまう。

そのギリギリのところを攻めているようで、しかしその結果はむしろ軽い緊張感を与えることによって、より通常部分の穏やかさを引き立たせている。



その意味では曲後半に挿入される則竹裕之のドラムソロも同じですが、やはり安藤まさひろのギターの方がより手慣れた感じがあり、さすがと思わせます。

もっともこの時点で安藤まさひろにとっては既に13枚目(!)のアルバムだったわけですが。







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僕が安藤まさひろに惹かれるのは、このようにプレイヤーとしての卓越したテクニックで攻めの姿勢を保ちながらも、あくまで楽曲優先で、自分のプレイはそれを構成する一要素とする高いレベルのバランス感覚です。

僕自身はフュージョンをやるわけでもないし、ここではあくまで歌モノPopsを作っていこうと思っているのですが、このバランス感覚には非常に憧れるし、いつかは今回取り上げた4小節のような最高の引き立て役が産み出せたら幸せだなと常々思っています。




なんだか4小節の話ばっかりしてますけど、もちろん曲中のギターソロやエンディングのウィンドシンセのソロも大好きですよ。一人でこんなことやって悦に入ってるくらいですからね!



んじゃ、また。